ご存知ですか?
最近、スポーツ界で話題のリカバリーコンディショニングツール「フロスバンド(コンプレフロス)」
トレーニーやアスリートが使用しているのがSNSでも拡散されていて口コミで広がっているので、目にした人も多いかと思います。
最近では、ダルビッシュやエンジェルスのマイク・トラウトが登場したことでも話題のYoutuber、qooninTVでも紹介されました(当ブログの紹介もアリ)。
日本ではこれからですが、海外ではメジャーリーガーなどプロアスリートが使うのもよく見かけます。
これは一体どのようなものなのでしょうか、解説したいと思います。
ぐるぐる巻きつけるだけで体が動きやすくなる驚異のツール
使い方は意外にシンプル。
画像のようにぐるぐる巻きにするだけでビックリするほど体が動くようになります。
「本当に?」という感じですが、よく効くんですよね。
このツールを使うことでどんな効果があるのでしょうか。
主に以下の3つになります。
② トレーニング、練習、試合時での痛みが緩和される。
③ 体の循環がよくなりスッキリする
なぜこういったことが起こるのかについてはまだまだ研究の余地はあります。
しかし、現在のところ専門家の意見も加味して言える範囲では、以下のような原理でこうした効果が得られるのではないかと考えています。
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圧を加えることで筋膜リリースが起こっている?
フロスバンドを巻くことで何が起こるのか?
筋膜リリースと同じ効果があるという意見があります。
ちなみに筋膜リリースというのは日本では誤解をされている言葉です(詳しくはこちらをご参照ください)。
「筋膜リリースで筋膜をベリベリ剥がす」というとわかりやすいのでそういう言い方がされていますが、実際には筋肉内の組織(Fascia)の流動性を高めているということで、「筋膜を剥がしている」わけではありません。
ただ、フロスバンドを使うことによって本当の意味での筋膜リリースが行われ、可動域が上がったり痛みが緩和されると考えられています。
フロスバンドを巻く事で筋膜(Fascia)で起こること
フロスバンドを巻くことで筋膜リリースされるとして、ではその時に何が筋肉内で起こっているのでしょうか?
まずバンドを巻いた圧の刺激が加わることによって、神経のセンサーを通して細胞が活性化。筋肉内の組織の流動性が高まるということが起きます。
カチカチな筋肉内の組織が柔らかくなるイメージといえば伝わるでしょうか。
その他には圧迫を加える事で一酸化窒素の濃度も上がります。
一酸化窒素には血管を拡張させ血液循環を上げる効果があります。
バンドによる圧迫でこうした効果が得られます。
一時期テレビでも紹介された筋膜注射(現在は名称を変更されています)。
筋膜に水分を加えるもので、その模様が以下の動画です。
白い筋膜内に水分が広がっていき、正に流動性が高まっているのがわかります。
なぜこのように水分が広がるのでしょうか。
筋膜といえば一枚の膜のようにイメージされる方が多いかと思いますが、ミクロのレベルで観察すると実際はミルフィーユ状になっていて、層と層の間に水分の層があります。
ここの水分が滞り組織が固まると筋肉の動きを妨げるのですが、この動画のように外から注射で水分を入れてやると動きがよくなります。
面白いのは、注射でなくフロスバンドで外的な力を加えて水分が流れるようにしても同じ効果があるということ。
こうすることで俗に言われる「筋膜リリース」が行われます。
カチカチに固まった筋肉の中に水分が行き渡る。
フロスバンドで体が動きやすくなる理由はこういう仕組みと考えられます。
なぜ可動域が上がったり、体が動きやすくなるのか?
こちらも解説しましょう。
バンドを巻いてFascia(筋膜)に働きかけると、間接的に運動神経のトーンの低下という現象が起こります。
運動神経のトーン低下とは、イメージ的に言うならば神経の「ストッパー」が外れる現象。
「これ以上はダメだよ」と制限している神経に働きかけ、筋肉が動きやすくなったり可動域が広がったりします。
疲労している時に、体の違和感でいつもと違って動きにくいという事がありませんか?
運動前はそのような動きの「ストッパー」があるので、フロスバンドそれを外してやります。
すると、練習や試合で思うように動けたり、反応できるようになります。
フロスはそのようなことができる優秀なウォーミングアップツールと言えます。
海外では実は前から人気のフロスバンド
フロスバンドは海外ではクロスフィットなどを中心に、実は数年前から人気となっていたツールです。
フロスバンドの種類もたくさん出ているのですが、残念ながら日本には今まで並行輸入のみで正式には入ってきていませんでした。(アマゾンでは高い値段で売られていますが・・)
その点で、「サンクトバンド社のコンプレフロス」が日本で正規で販売されたフロスバンドになります。https://www.sanct-japan.co.jp/
私も使っていますが、ゴムアレルギーの起こりにくい素材を使用し、バンド特有の気になる匂いも抑えたいいフロスバンドだと思います。
そしてこのサンクトバンド社の代表は元サッカー日本代表のレジェンド秋田豊さん。
秋田さんは自らフロスバンドを携え、Jリーグやプロ野球チームなどに使用法を講習して回っています。秋田さんご自身がトップアスリートだったので、その効果を自身で体感しているのでしょう。
フロスバンドの共同開発者であり、アドバイザーを行っているのはドイツオリンピックチームやドイツサッカー代表などのメディカルチームを診るドイツ理学療法士界の重鎮スベン・クルーズ氏です。
スベン・クルーズ
このブログの内容も、私がスベンと直接ディスカッションした内容を元にしています。
コンプレフロスの使い方について
共同開発者のスベンさんがコンプレフロスを使用している動画が以下のもの。使い方の感じをつかむためにこの動画をチェックしてみてください。
コンプレフロスの基本的な使い方をまとめると以下になります。
① 毎回毎回ロールに巻いて使用すること
② 25~50%(このあたりは自分の感覚で)伸ばす
③ 基本的に心臓から遠いところから近い方へ巻く
④ 巻いたバンドの50%ずつのスペースで巻いていく
⑤ 巻いた状態で自動運動と他動運動を行う。2〜3分を1セットにして1〜3セット
⑥ コンプレフロスを外して自動運動と他動運動を2分程度行う
対象となる部位を可動させながら行うと効果大です。
また、サンクトバンド社のホームページにある使用法も非常に参考になります。
https://www.sanct-japan.co.jp/howto/186/
https://www.sanct-japan.co.jp/howto/188/
強く巻きすぎたり長時間行うと血栓のリスクもあるのでご注意ください。
人によっては使用後皮膚に赤みが残る可能性がありますが、炎症と同じように時間と共に引いていきます。
また、妊娠されていたり高血圧、甲状腺機能障害がある方などは医師にご相談の上、使用してください。
コンプレフロスの選び方について
バンドの強さの種類は4種類あり筋量、脂肪量、感覚の感じやすさによって選択しますが、一般の方でしたらLime Green, 一般の運動者ならBlueberry~Plum、アスリートならPlum~Grayをお試しください。
コンプレフロスには1インチ、2インチ、3インチの幅の種類と2mと3.5mとの長さの種類があります。
あなたに適切なコンプレフロスをご提案してみましょう。
1インチのものは主に指など小さな部位に行います。
私の関わっている選手では柔道や相撲、ゴルフなど握る動作を多くする競技の人に頻繁に使われています。
さらに圧迫を強めたい人にはこのようなダブル巻という技もあります。
一番汎用性が高いのは2インチです。
どこにでも結構応用できます。
コンプレフロス初心者にはこちらの幅がお勧めです。
使い方にやや困るのが3インチ
こちらは腰などに使用するのがお勧めです。
また呼吸を楽にするために横隔膜付近の肋骨の下から肋骨、お腹に巻くのもありです。
次に長さ
2mと3.5mの種類があります。
価格も1000円ほど違うので短い方を選ぶ方が多いようです。
使用する部位や体の厚みで選ぶのが良いでしょう。
膝や足首など関節をまたいで使用する場合は長い3.5mがお勧めです。
可動域の向上にはもってこいです。
局所的に前腕、ふくらはぎなどに使用する場合は2mでも十分です。
また筋肉が分厚い人などは3.5mの方がよいでしょう。
例えば太ももなどは厚いと周囲が60㎝以上ありますので、2mのコンプレフロスだと数周しか巻けなくなってしまいます。
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よく聞かれる質問
1、コンプレフロスは痛いの?
基本的に痛くありません。
ただ体の状態によりこのように赤くなる場合もあります。
痛い場合は強く巻きすぎているかもしれません。
2、肩とか自分でどう巻くの?
こちらの前沢さんの巻き方が一番巻きやすいかと思います。
最後バンドをフックする際は脇で挟んで固定して巻き込んで安定させてやります。
その他前腕なども同様に体のどこかで固定して巻き込んでやりましょう。
3、一度使用したらまた巻きなおすの?
確かに一度ほどかれたコンプレフロスを巻きなおすのは面倒な作業です。
しかし次に使用することを考えたら巻きなおす方がよいでしょう。
私もキックボクシング競技者の際にバンテージを巻きなおすのに難儀をしていましたが、巻きなおしの時に今日も怪我なく終われたことへ感謝を込めて巻きなおしました。
また芯は残しておいた方がよいでしょう。その芯に巻きなおして次も使用しましょう。
4、洗えるの?
水洗いしても耐久力は変わらないとされていますが、手間を考えるとアルコールウェットテッシュで拭くのが一番かと思います。
5、加圧トレーニングと何が違うの?
圧迫を加えるという事でフロスバンドと加圧バンドと何が違うの?という質問もよく聞かれます。
対比させる研究はないようですが、局所に圧迫を加える加圧とより広範囲で圧迫を加えるフロスバンドとの違いというのが考えられます。 様々な意見を加味すると加圧トレーニング局所の圧迫にで血流自体を一時的に寄せることで代謝ストレスの向上となり、筋肉の再合成を促していトレーニング方法です。
これに対してフロスバンドは血流を止めるわけではなく、それ以下の圧迫の力で皮下組織、Fasciaの間質リンパ液の流れやそれに含まれる神経受容器に対して刺激を与え、可動改善や疲労物質の排出などを促すという事が目的となります。
目的も方法もまったく違うので、それぞれの特徴を抑える必要があります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25678204
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25249278
使っている人の声
アスリートを中心にコンプレフロス(フロスバンド)を使う人が増えています。
代表的なのはパワーリフターの信田泰弘さん
使い方を熟知していて、コンプレフロスの効果の啓蒙もされています。
パラリンピック柔道日本代表の藤本選手も使い始めました。
研究者でボディビルダーとして有名な岡田隆さんも。
アナウンサーの方は肩こりが改善したとのこと
スポーツチームでの使用の例は、野球だとピッチャーではこのように巻いてキャッチボール前に行ったり、登板日翌日にリカバリーとして使用したりします。
左上から時計周りに 1、肩にフロスバンドを巻く 2〜4 その状態でピッチングの動作を行う。
肩の制限が外れ、勢いよく肩が回ることが確認できる。スピードアップやリカバリーにも有効。
サッカーでは腫れやすい足首などに巻くと腫れが引くのでリカバリーとして、また可動が上がるのでアップで巻くと即効性の効果が期待できます。
その他の競技も同様です。どのような動きを獲得したいか?関連する関節などに巻いて動かす!
それによりパフォーマンス向上、リカバリー促進を目的に行います。
みなさんも賢く使いこなしてみてください!
疑問:他のバンドでは代用できないの?
他のエクササイズバンドなどでは代用はできないのか?
サンクトバンド社のフロス専用のバンドではなくて、例えばセラバンドみたいなもので代用できないのか?
この質問をよく聞かれるので、書いてみます。
まず、サンクトバンドの特徴としては以下のホームページの5つの特徴をご覧ください。
https://www.sanct-japan.co.jp/about/
1ラテックスアレルギーが極めて少ない
2パウダーを使用していないので不快でない
3長期使用でもパウダーいらず
4耐久力に優れる
5天然ゴムで安心。
といった「使いやすさ」の特徴が挙げられています。
ただ、自分が感じているのはもっとシンプルに「伸びやすさ」です。フロスバンドはやはり専用に作られているのでよく伸びると思います。
試しに他のエクササイズバンドと比べてみました。
伸ばす前
50%伸ばした状態
わかりにくいかもしれませんが、あまり伸びていません。
こちらはコンプレフロス
元の状態
50%伸ばした後
かなり伸びているのがわかると思います。
条件を合わせるために二つとも同じような中程度の強度設定のバンドを選びました。
コンプレフロスは伸びだけでなくぴったり圧縮する力が強いので、いい感じに締め付けられて負荷があります。
この強い圧迫が前述した筋肉内の一酸化窒素の濃度の変化に影響するのでは?と思います。
セラバンドなどではこれだけ強い圧着が生まれません。
ただ、これは論より証拠で一度体験して実感してみるのをお勧めします。
フロスバンドのデータ
また、フロスバンドを使った実験のデータも発見しました。
近年それほど強くはないものですがフロスバンドを使用した研究もされているようです。
例1
足関節の可動域向上とジャンプ能力の向上
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28254581
例2
肩の可動域の向上
https://journals.humankinetics.com/doi/abs/10.1123/ijatt.2016-0093
やはり研究の介入方法として侵襲性が高いのでスポーツ科学的な可動域についてしかなかなかありませんが、どれも可動域向上には有益のようです。
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おまけ
アメリカで人気のフロスバンドとコンプレフロスを比較してみた!
アメリカではフロスバンド=クロスフィットというイメージがあるかもしれません。 元々はクロスフィット界で有名な Kelly Starrettが主催するMobility WODでフロスバンドを紹介したことで広がりをみせました。
その彼が有名にしたフロスバンドはVooDooフロスバンド。
これは強い圧迫力と耐久性で人気です。
しかしながら、粉まみれで届くという難点があり、ラテックスアレルギーへの対応やバンド間の密着感という点ではコンプレフロスに優位性があるでしょう。
こちらはラテックスアレルギーに対応していて、カスタマーサービスが良いです。 しかし通気性が悪いという評判ですね^^;
これは伸張性が高くてラテックスアレルギーにも対応していますが、同じく通気性が悪いという口コミが。
一長一短です^^;
フロスバンド全般でアメリカで評価されるポイントしては
張り付きがよい
耐久力がある
伸張性が高い
粘着力がよい
分厚い
ラテックスフリー
といったところが挙げられます。
これに照らし合わせると分厚いという点以外は、サンクトバンド社のコンプレフロスはおおむね優秀で、使いやすい製品だと思います。
今後サンクトバンド社に期待したいのは、他のバンドのように使用説明書や持ち運びの袋が同封されることでしょうか。 これらがあるとさらにいいですね。
アメリカでは一足早くブームになったフロスバンド。日本でも徐々にその輪が広がり始めているように思います。
2019/01 追記
コンプレフロスに関する新たな見解 筋膜(Fascia)リリースではない??
先日Fascia(筋膜)の国際学会であるInternational Fascia Research Congressに参加してきました。そこで数年ぶりに再会したアメリカのドクター(自身の会社でフロスバンドを出しています。)とフロスバンドの効果に関してのディスカッションをしました。
これまでお伝えしてきたように一つは圧迫によるFascia(筋膜)を構成する要素の一つで潤滑性を保っている基質部分を変化させるのではという見解。
それに加えて新たな2つの見解を教えていただきました。
その1、
筋肉のストレッチ
しっかりと密着するコンプレフロスで筋肉の上層を抑え、スラッキング(皮膚などの緩んだ「遊び」の部分を抑える)する事が可能となり、その状態で自動運動で関節を動かすことにより筋肉独自に対してストレッチ作用を促す。
数年前に話題となったこの動画
「何故フォームローラーは筋膜リリースとなりえないのか?」
https://www.youtube.com/watch?v=BnYdzaoMyQ8
筋肉の上、表皮の下にはこのような潤滑性させる脂肪の層があります。
https://www.plasticsurgery.theclinics.com/article/S0094-1298(16)30143-2/pdf
実際フォームローラーをどれだけ強くコロコロしても上層の分厚い層をスルスルと擦っているだけですよ。という動画です。
その脂肪層自体も硬くなることもあるので、上層の部分をしっかりとコンプレフロスで遊びを取ってやることで筋肉をストレッチして体がスッキリ動かしやすい状態にすることができるのでは?という意見でした。
その為、巻いた後の自動運動というのが重要になるかと思います。
その2
関節のCentration(求心化)
スポーツなどのダイナミックな動きではそれぞれの関節が適切な位置でグラつかないように安定した位置を保つことが重要です。(以下のローテーターカフの記事もご参照ください)
http://www.fitevangelist.com/archives/697
http://nprehab.blogspot.com/2015/12/the-power-of-joint-centration.html
この関節の安定した状態をCentration(求心化)という表現をされますが、求心化が起こっていないと「私の関節の位置はここでちゃんと安定してますよ」という情報伝達が脳へ適切に送ることができず、結果として動きの不正や筋力の低下、関節の炎症などを伴ってきます。
コンプレフロスを関節部を介して巻く事によりこの関節の求心化が起こり、しっかりとした関節の位置でしっかりとした動き、筋力が発揮できるようになるとの事。
こちらも適切な関節の位置覚を伝達し求心化することができる状態でダイナミックな自動運動をすることが重要になるかと思います。
確かにフロスバンドで筋膜(Fascia)リリースという事だけでは不十分だと思っていましたので非常に面白い意見でした。
まだまだこちらもしっかりとした研究結果という訳ではありませんが、考えうる効果のメカニズムかと思います。
という事で巻くだけではなく自動運動でしっかりと動かすことも重要です!!
【参考文献】
http://axissyllabus.org/assets/pdf/Schleip_Fascia_as_a_sensory_organ.pdf
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11467897
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25649317
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16259237
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