慢性的な痛みに悩む人に朗報!?震えるローラーの効果とは?
最近、ネットでも人気の振動するフォームローラー、ドクターエアシリーズ。ストレッチロール と小さなサイズの3Dマッサージロール
の2種類がありますが、お手に取ってみた方もいるでしょうか。
震えるストレッチローラーと普通のフォームローラー
アスリートの間でも口コミで人気で、メジャーから日本に帰ってきた上原浩治選手やコンサドーレ札幌のJリーガーなどウォーミングアップやコンディショニングに震えるロールを使う選手も出てきました。
他にも私の周りにいるプロアスリートからこんな声が聞こえてきています。
普段のコンディショニングにはかかせないツールです。 肉離れをしたことがあるので練習、試合後は張りがでてきますが、ドクターエアをかけると次の日の太ももの張った感じが収まります。 (20代 プロサッカー選手)
球場によってマウンドの硬さが違うので足首の捻挫が多く柔らかいマウンドになると足の感覚がフィット感覚がうまく合わなかったのですが、ドクターエアで強い振動を足の裏とふくらはぎにかけるとフィット感がでるので試合前のアップで使っています。 (20代プロ野球選手)
重くないので遠征にも持っていきやすく、遠征のたびにドクターエアストレッチロールを持っていきます。ただ宿舎の下の階に響くので必ずベッドの上で行うようにしています。 (20代プロ野球選手)
仕事をしながら競技をしているのでマッサージなどに行く時間がなく、疲労回復に困っていましたがドクターエアのストレッチロールを使用することで日々の練習後の疲労回復に重宝しています。 (30代 プロ格闘家)
さて、これらは振動しない普通のフォームローラーと何が違うのでしょうか?
震えることで得られるその効果に注目しています。
肩こり、腰痛など慢性的な痛みやしつこい疲労、筋肉の張りど感じている方は手軽に症状を改善できる可能性があります。
もちろんアスリートのコンディショニングとも抜群に相性がいいです。
ただ、先にお伝えすると、以前の記事でもご紹介させていただいた通り筋膜の癒着をべりべり剥がして動かしやすくすると言われるいわゆる「筋膜リリース」はストレッチロールに限らずどんな器具でも不可能です。
巷では「筋膜の癒着を剥がして肩こりすっきり」というような記事を見かけますが、フォームローラーを転がすぐらいで筋膜の組織が大きく変わることはありません。
*ちなみに筋膜リリースの「筋膜」という言葉の誤解はこちらをお読みください。
また、震えるローラーでも普通のフォームローラーでも使用法を間違えると効果は期待できません。
以上を踏まえた上でこの二つのローラーの効果の違いを検証していきたいと思います。
まず震えない従来のフォームローラーの効果から説明していきます。
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フォームローラーの効果的な使い方とは?
よく「フォームローラーを使っているけど、効果をいまいち感じない」という方がいます。
そういう人は効果的な使い方がわかっていないのかもしれません。
どうすればフォームローラーで筋肉をリリースできるのか。
まず、フォームローラーでコロコロした時に、私たちの皮膚や筋肉でどんなことが起こっているのかを知りましょう。
その時の体の中を覗いてみると、こんなイメージです。
フォームローラーを転がす
↓
筋肉や皮膚に刺激が起きる
↓
刺激は筋肉の受容器(センサー)に働きかける
↓
センサーから脳に信号が行き痛みを抑制。筋肉を伸びやすくする。
シンプルに言うと「コロコロの刺激によって痛みの感覚を変え筋肉をリリースしている」のです。
もう少し詳しく見ていきましょう
こちらはMLBのボストンレッドソックスのメディカルトレーナーだったMike Reinoldさんが筋肉のリリースについて書いた記事。
マイク・レイノルドさん
少し難しいのですが、わかりやすくしてみます。
彼はフォームローラーなどを使って筋肉をリリースする5つの効果的な方法(セルフマイオファッシアルリリース:通称SMR)を提案しています。
これ通常のフォームローラーの効果的な使い方を知る上で非常に参考になるものです。
SMRというフォームローラーの使い方
以下は、Mikeさんがフォームローラーを使う時に効果を出やすくするため指導する5つの方法です。
ただ、フォームローラーを転がすのではなく転がし方や、当て方を工夫することで効果が出ることがわかります。
SMRその1、刺激を当てる面積を小さくする。
フォームローラーやボールを使って筋肉にアプローチする場合、当たる面積を小さくし、特定の感じる部位に当たるようにする。
筋肉に当たる面積を小さくすると部位が特定され脳が意識しやすくなるので、感覚も変わりやすくなります。
ただ、当てる部位を小さくしたからといって特定の筋膜がリリースされるという事はありません。
あくまで「感じ方」が変わるということ。ただ、こわばりなど問題を起こしている「感じ方」が変わるだけでも十分筋肉はリリースされます。
この方法は、テニスボールやゴルフボールなどがやりやすいですが、フォームローラーでも表面がボコボコのものを使うと同じ効果が得られます。
SMRその2、様々な角度で刺激を当てる。
様々な方向から筋肉にフォームローラーを当てることで感覚が変化します。
筋肉の繊維に対して平行に当てたり垂直に当てたり変化をつけることで、刺激にも変化がつき筋肉がリリースされやすくなります。
また、筋肉だけでなく皮膚の下にある筋膜もゆるむので皮膚が伸びやすくなります。筋肉との相乗効果でさらにリリース効果が得られます。
ただ、繰り返しますが癒着した筋膜が削げ落ちるというようなことではありません。
あくまで動きがよくなるというレベルです。
SMRその3、当て続けて圧をかける
コロコロして硬さを感じる部位に10秒もしくはそれ以上圧をかけ続けます。そして、再びコロコロして他の硬さを感じる部位を見つけたら同じように圧をかけ続ける。これを繰り返します。
実はコロコロすること自体にはほとんど意味がありません。
コロコロすると当たる部位に連続して刺激が行って、神経の感じ方が変わるだけなのです。
そして、圧をかけ続けると皮膚にある感覚のセンサーが刺激をキャッチして脳へ伝達してくれます。それにより脳の感じ方も変わって、逆説的に体の感覚や可動域も変わるという仕組みです。
硬い部分に圧をかけ続けると、そこを集中して脳が意識することになり、感じ方も変わります。
SMRその4、当てたまま動かしてやる。
これには二つの目的があります。
一つはフォームローラーを当てたまま動かすことで、1〜3と同様に感じ方を変える。
もう一つは当てながら筋肉の収縮伸張を繰り返すことで、皮膚は動かさずに筋肉を動かす。そうすると、皮膚と筋肉の間の組織がなめらかに動くようになります。
主にはやはり感じ方の変化がメインの目的で、組織の変化はサブ。しかしながら、リリースには有効です。
SMRその5、を当てながら当てている部位とは別の部位を動かす
例えば内太もも(内転筋)にフォームローラーを当てて膝の関節の曲げ伸ばしを繰り返す。こういったことも有効です。
膝の関節の曲げ伸ばしをする際には、様々な筋肉が連動して動きます。内太ももに刺激を入れながら、他の筋肉を動かすと全体が活性化するという効果を狙います。
以上がMike Reinoldさんの紹介するリリース法(SMR)です。
簡単にまとめると、フォームローラーやボールを使って様々なアプローチで筋肉や筋膜などに刺激を入れ、「感じ方」を変えるということを行っています。
こうすることで効果的に筋肉をリリースすることができます。
ではこれに対して振動するローラー(ドクターエア)を使うとどうなるのか?
ドクターエアのストレッチロールやマッサージロールでやることはシンプル。
コリや痛みを感じるところで振動を当てて、振動を感じながら動かさずに1~3分ほどその状態で維持する。
これだけです。
これで、Mikeさんが提唱する5つの効果を全て得られます。
あっちをコロコロ、こっちをコロコロと工夫したのに当てるだけでいいなんて、ちょっとずるいですよね^^;
振動を与えることで、いろいろなアプローチでコロコロ動かすのと同様の効果が得られる。また、自分で動かす必要がないので、一日の終わりなどの疲れた時には楽にコンディショニングができます。
フォームローラーとの違いは「振動」という刺激が入るところです。
振動が及ぼす体への効果のメカニズムが最近研究によってわかってきています。(研究1)(研究2)
振動が筋肉に与えられると筋収縮が抑えられ緊張を和らげます。
その結果、可動域が広がったり筋肉がゆるんだりします。
圧による刺激も振動と同じく皮膚のセンサーで受け取られますが、振動の方が素早く脳へ送られます。
つまり圧よりも振動のほうが感覚を変化させやすいのです。
振動で組織にどんな変化が起こる?
実際のところ局所に振動をかけた時のしっかりとした研究はまだ発表されていません。
振動の刺激が体の位置や動きの感覚を担う部位に影響する事は報告されています。そのため体の可動域や動きの変化は素早く出やすいです。
こちらは参考程度になりますが、振動ロールによる可動域の変化のデータです。
青のグラフが通常のフォームローラーですが、振動ロールの赤のグラフのほうが可動域は向上しています。
また筋膜の学会では、振動を与えることで細胞間の流動性を高めることも可能と言われています。
また垂直方向の振動により組織の保湿に重要なヒアルロン酸の流れをよくする事も報告されています。(Roman et al 2013)。これは美肌にもつながる可能性があります。
振動による刺激がコラーゲン繊維の元の活性を促すとも言われるため、主にコラーゲンで形成される筋骨格系、皮膚などの体の組織の維持にも役立つ可能性があるでしょう。
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ドクターエア ストレッチロールの使い方
公式サイトより、ドクターエアストレッチロールの使い方を紹介した動画です。
フォームローラーのように何度もコロコロする必要がなく、当てるだけでOKなので背中など筋肉をリリースしにくい箇所でもアプローチできるのがわかるかと思います。
また、構造上ストレッチが難しい足底にも簡単にアプローチできます。
全身満遍なくリリースを行っても短時間で済むのが大きな利点ですね。
フォームローラーとドクターエアストレッチロール(マッサージロール)どっちを選ぶ?
痛みの感覚を和らげたいという程度なら通常のフォームローラーのほうが安価です。
しかし、コンディショニングが目的ならこの振動ロールシリーズは一考の価値があると思います。
フォームローラーであっちをコロコロ、こっちをコロコロするのは時間もかかります。
それより短時間で気になる部位に振動をさっとかけて、肩こり・腰痛や足底筋膜炎などのしつこい痛みを解消する。また、アスリートやスポーツ愛好家ならトレーニング後の疲労を振動するロールで和らげるのは効果的です。
アスリートの間で口コミでじわじわ広がっているのも効果を実感する人が多いからだと思われます。
質問コーナー
振動について質問をいただくので、お答えしてみます。
Q
振動するローラーに興味があるのですが、どのくらいの時間ぶるぶるするのが効果的でしょうか。振動の強さによって効果は違うのでしょうか?
A
文献を探りましたが人体に対する研究は医学論文としては妥当なものはありませんでした。
人体以外ではいくつかありました。皮膚のセンサーと筋肉のセンサーでは反応が異なります。
ただ、どちらも効果を感じるのに35秒以上は必要なようです。 長ければいいというわけでもなく3分30秒くらい振動させると体のセンサーの反応は一定するようです。 ここから効果的な時間は35秒以上3分30秒以下と言えそうです。
公式ページにあるドクターエアのマニュアルによると 左右の6-8箇所の部位を45秒ずつかけるとすると全部で10分前後で終了できます。 コンディショニングの時間としてはほど良いのではないでしょうか?
また、どのくらいの振動が効果があるのかも気になるところです。
こちらは振動するローラーの研究がほぼないために全身振動の研究などしかありませんが、30Hzから80Hzで反応があるようです。
ドクターエアのストレッチロール、マッサージロール共に振動は調節可能で35Hzから66Hzの振動数になっているので、体に適応する数値に設定されていることになります。
Q
妊婦が振動マッサージ機を使った場合に胎児に及ぼす影響はどんな事が考えられるのでしょうか? 例えば、乳児揺さぶり症候群の症状が起こったりもするでしょうか?
A
揺さぶりとは振動が違うので違いますが羊水に保護されているとはいえ外的刺激は線維芽細胞を活性化し線維構築に影響を与えます。
臨床研究はありませんが、胎児では心筋血管系の繊維構造が変化してしまう気がします。
妊婦さんのリラックスは必要ですが妊娠中の腰痛やむくみはホルモンなどの影響も大きいです。むくみはガーゼなどの優しい刺激、腰は撫でるようなストロークマッサージを心がけ、強い振動は避けた方がいいでしょう。
参考論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/5942033
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4254073
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3737908/
研究1 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1189743/
研究2 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/154563
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