ローテーターカフに痛みを感じたら?トレーニングとケアの運動生理学的に正しい方法を知ろう。

ローテーターカフの本当の役割とは? ほぐす?鍛える?どうやって?
運動生理学に基づいた正しいケアの仕方

ローテーターカフというのを聞いたことがあるでしょうか?

最近は、すっかり一般的になったいわゆるインナーマッスルの代名詞。
野球、テニスなどのオーバーヘッドアクティビティを行うような方、トレーニーの中ではよく知られる肩の奥の筋肉の総称ですね。

今回のお題は肩を回すスポーツをする方や、四十肩、五十肩などにお悩みの方は必読のローテーターカフです。

特に肩に痛みを感じている方には役に立つ記事です

 

ちなみに日本語ではローテーターカフ=回旋筋腱板と言われることもありますが、実は「腱板」は日本独自の表記。世界的には「Rotator cuff tendon」とローテーターカフの骨などに付着する部分の「腱」の部分を指します。

筋肉のローテーターカフは世界的にも「Rotator cuff」とそのままになります。

一つ豆知識でした。

ローテーターカフの筋肉の場所

そのローテーターカフの筋肉は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋。それに上腕二頭筋の長頭と呼ばれる部分も見解によりローテーターカフに含めることもあります。

 

筋肉から骨に付着する部分は腱板になります。

 

画像を見ていただくとわかりますが、胸の厚みを見せる大胸筋などの表の大きな筋肉とは違い、ローテーターカフは肩の関節に近い奥の方の細かい筋肉になります。まさにインナーにあるマッスル。

このインナーマッスルがしっかりと働いてはじめて、大きな筋肉もちゃんと活躍できるようになっています。

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ローテーターカフの役割をまず知る

まずはローテーターカフの役割について教科書通りのお話しをお伝えします。

筋肉の役割は実はシンプルです。

筋肉には骨に付着している起始と停止という付着部があり、地点Aと地点Bの関係で考えられます。

  • まず地点Aと地点Bの距離を縮める事。
  • 次に地点AとBが離れるのを維持すること。
  • 最後に地点AとBの距離をそのままで力を入れる事。

この3つで筋肉の動きは理解できます。

 

教科書通りでいくとローテーターカフの筋肉の役割はそれぞれ以下になります。

棘上筋


棘上筋の地点Aは~肩甲骨の肩甲棘と言われるでっぱりの上の窪み
地点Bは上腕骨の大結節(結節は筋肉が引っ付きやすいようになっている骨)という部分です。

どのように動くかと言うと肩を上げる動きを補助するように働きます。

以下の動画のような感じです。

 

棘下筋

棘下筋の地点Aは先ほどの棘上筋でもでてきた肩甲棘の下になります。

地点Bも同様に上腕骨の大結節という部分です。

働きは主に外旋と呼ばれる肩を外側に回す動きになります。

小円筋


小円筋の地点Aは肩甲骨の後面の外側になります。

地点Bも同様に上腕骨の大結節という部分です。
働きは棘下筋と同様に外旋と呼ばれる肩を外側に回す動きになります

肩甲下筋

肩甲下筋は前面奥の筋肉で、地点A肩甲骨前面の窪み部分で地点Bは上腕骨の小結節という部分でその他と少し異なります。

働きは主に内旋と呼ばれる肩を内側に回す動きになります

上腕二頭筋長頭


上腕二頭筋長頭は前述した画像を見ていただくと肩の奥の関節唇という部分に付いています。
その為、肩を安定させるのに重要なローテーターカフの一部とみる専門家もいます。

以上の細かい筋肉でローテーターカフは構成されています。

 

ここまでは教科書通りの説明です。

 

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ローテーターカフは実際にどのように動くのか

では実際に動きを伴った際にローテーターカフはどのように活動しているのでしょう?

まず最初に言及しなければならないのは肩の関節は非常に自由度が高い「よく動く」関節だということです


肩を動かすのに肩だけを独立して動かすことは不可能で、基本的に肩甲骨の動きと一緒に活動をします。

このようにダイナミックに動く肩甲骨に合わせて、肩の関節もよく動きます。

この肩のダイナミックな動きに対応するべく、ローテーターカフの役割は「グラつかない」ようにしっかりと安定した位置を保つことにあります。

 

例として横から手を挙げる肩の外転という動きを見てみます。下の画像のようにローテーターカフが筋肉に沿って矢印の方向に肩関節と協調して働くと、肩甲骨の筋肉も協調、肩が動きます。

また前後に腕を動かす際にも、ローテーターカフが肩の関節が前後にグラつかないように支えています。

ローテーターカフがそれぞれ協調して活躍しないと肩の関節がグラついてしまうわけです。

 

では、関節がグラついたら何がいけないのでしょうか?

先ほどお伝えしたように肩を動かすのには肩甲骨の筋肉が重要です。
例えばこの大胸筋

上腕骨に付いています。
その他の肩を動かす肩甲骨の筋肉も肩甲骨や上腕骨、また肋骨に付いています。
ローテーターカフはそれらの奥の方にあります。

 

筋肉の地点A、Bのお話しに戻ります。
奥にあるローテーターカフは、肩の関節がしっかりと地点A,Bの「位置にいますよ!」ということを知らせます。

それが乱れ、地点A、Bが変化してしまうと、肩、肩甲骨を動かす筋肉がちゃんと仕事をしてくれなくなってしまいます。

上の図でいうと、ローテーターカフが乱れると、大胸筋や肩甲骨につく筋肉もうまく働かなくなるわけです。

 

ローテーターカフの筋肉は筋肉の走る方向が異なっていて、それぞれが肩を関節に近づけています。

その引っ張り合いが乱れると、下図のようにイテテ!となってしまうのです。

 

まとめますと、ローテーターカフは肩のダイナミックな動きの際に、ぞれぞれの筋肉が協調して肩の関節に腕の骨を近づけて安定させる役割を果たしています。自由度の高い肩の動きに対応すべくサポートをしています。
これが一番のローテーターカフの役割です。

 

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ローテーターカフのトラブルとは?

疲労時や怪我をしている時は肩を動かす筋肉の活動が変わってきたりします。
これは肩を上げる運動をする人には考慮すべき重要な要素です。

四十、五十肩のように肩が挙がりきらない、引っかかるという症状の際は、ローテーターカフの引っ張る力が低下。

肩を上げる際に肩をすくめるように挙げています。

この場合は内側上方に引っ張る上部僧帽筋という筋肉の活動が高くなりすぎてしまっています。

また疲労時では内側下方に引っ張る下部僧帽筋という筋肉の活動が低くなり棘下筋の活動が高くなりすぎてくるという報告もあります。

何か肩が挙げにくいという症状があったらローテーターカフも含めた肩の筋肉がしっかりと働いてくれていない可能性があります。

 

ローテーターカフが問題で起こる肩のケガ

他にローテーターカフに問題があって起こるケガを見ていきます。

 

腱板損傷
投球動作などで肩を酷使するとローテーターカフの腱である腱板にダメージが積み重なります。
その積み重ねによって、また急に手をついたりという外傷によって腱板が損傷してしまいます。


しかし、腱板は損傷されていても腕は上がります。腱板の一部分が断裂したとしても、他のローテーターカフが腱板の代わりに働き補填して肩を上げます。
ただスムーズな動きは妨げられます。

それによってその妨げられた動きによる肩へのストレスが肩峰下滑液包という肩の奥の方で炎症を起こし痛みを感じます。

 

インピンジメント症候群
非常に多く発症する肩の問題です。
いわゆる「肩が引っかかる」という症状です。
インピンジメントというのは肩の肩峰下スペースという部分が狭くなってしまって問題を起こします。

肩峰下スペースが狭くなるのには2つ種類があります。

一つは骨自体に骨棘という骨の棘ができてしまっている状態。これは生まれつきのこともあります。
もう一つが過度な肩へのストレスや肩の筋肉のアンバランスなどで起こってきます。

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運動生理学的に正しいローテーターカフのケア

ではこれらのトラブルを起こさないために、どのようなケアをしたらいいのでしょうか?
キーワードは次の3つです。

  • 1、可動域を維持すること
    2、使われ過ぎている部位を緩和させること
    3、適度な強さを維持すること

それぞれを見ていきましょう。

1、可動域の維持
肩の可動域の維持は非常に重要です。
なぜか?
再び地点A,Bのお話です。
可動域が低下するというのは、地点A,Bの間がしっかり伸びていない状態です。
そのため、その地点の位置感覚が狂ってしまい適切な筋肉の収縮を行う事ができません。

では可動域を上げるためにどうしたらいいのでしょうか。
まず思い浮かぶのはストレッチかと思います。
この記事で書きましたが、ストレッチは可動域の維持には有効ですが改善する目的では大きな効果が期待できない可能性があります。

しかし、維持ができるだけでも十分です。以下のようなやり方を試してみてください。

可動域維持のストレッチ例

横向きで寝て腕を伸ばし、肘を90度に曲げます。そこから前腕を下の方へ押していきます。
重要なのは肩がしっかりと床側に密着した状態で浮かないようにすることです。
10~15秒ほど押して2,3回繰り返します。

またこのようなチューブや紐で、張力を利用してリラックスしてぶら下がるのもいいかと思います

 

また以下の動画のストレッチも有効です

 

可動域改善(自動可動域)にはこの記事でご紹介したフロスバンドがよいかと思います。

肩へのアプローチの動画(最初の1分30秒くらいまで)

動きのタガが解除されて可動域が圧倒的に上がります。

 

2、ほぐす
二つ目に使われ過ぎている筋肉を弛緩させて緊張を取ってやることが大切です。

ローテーターカフがしっかり活動していないと肩がグラつき、大きな筋肉を過剰に使って肩を動かします。
それによって肩の動き自体を妨げてしまいます。

改善策としては、このようなボールで抑えて動かして緩和させてやるのも一例です

またより効果的に弛緩させるには振動を加えるのがお勧めです。
振動するマッサージローラーに関してはこの記事をご参照ください。

振動ローラーでローテーターカフの活動低下で働きすぎる部位、主に肩の前側、下側をセルフマッサージをします。

ではローテーターカフ自体はゆるめるべきでしょうか?
応えはNOT ALWAYS
絶えず弛緩させればいいというものでもありません。

例えば投球動作であればこのように大きく可動を使います。

基本的に関与する肩周りの筋肉は一緒ですが、下半身から体幹部も大きく使いますので、様々な要因によって負荷がかかる筋肉も変わってきます。
例えばトップレベルのピッチャーは、球をリリースしていく際に肩甲下筋や広背筋という筋肉を強く使うのに対し、普通の人がボールを投げる時にはローテーターカフ全体や上腕二頭筋を強く使ったりします。

同じ動作でも、体の使い方が違うとかかる負荷や場所が変わるわけです。ですので、万人に「ここをゆるめればいい」という方程式は当てはまりません。

まずはローテーターカフをほぐす前に大きな筋肉からアプローチするのが効率的です。

もしそれでも違和感があればローテーターカフ自体もゆるめても良いかと思います。

 

3、スティッフネスの維持
3つめはステッィフネス=強度の維持です。
投球の画像を見ると、一連の動きの中で可動を大きく使っているのがわかると思います。。
いわばこのようなバネのように筋肉が伸びて働きます

そうであるならば、バネがしっかり伸びるように可動域が必要です。
また、バネ自体が緩いと、しっかりバネが伸びていても引っ張りの力に対応できません。

そこで必要なのが組織が伸びていくことに対する強度。そのために必要なのがしっかり伸び縮みを行う筋力の強化になります。伸び縮みがしっかりできるバネ自体の強さが必要なのです。

筋力強化には、チューブなどを使用するのをお勧めします。

ただここで一つ注意。
ローテーターカフはそれぞれ筋肉の走る方向が異なり、協調して肩を安定させています。
このようなよく見るようなシンプルなエクササイズも個々の筋肉を強化するのには有効ではあります。

しかし、おすすめは動きを複合させたエクササイズです。

例えば肩を外旋するというこのような運動に下から、横からその他の方向からの引っ張りを組み合わせて行う事です。

重要なのはしっかり可動域を使う事。戻す時も意識しながら戻すことです。このほうがローテーターカフが複合的に鍛えられ、強度も増します。

 

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ローテーターカフには脳の疲労も影響する?

最後にもう一つ豆知識を。
どうケアしても何かおかしいという方は、脳の疲労も影響している可能性があります。
脳が疲労してくると原始反射という作用で、肩の後ろ側の筋肉が弱くなって前方へ丸まってしまいます。
原始動物では四足が基本なので、このように肩が自然と丸まります。

常に脳を使っているようなデスクワークの方は、このような理由から一生懸命エクササイズしても自然と肩が丸まってきてしまう可能性があります。

修正の為のエクササイズとしては二つオススメします。

1、ゆっくり呼吸をしながら色々な方向に目を動かす

 

2、「ハイハイ」

この2つを行うと、丸まった肩が戻る可能性があります。

原始反射に関しては詳しく専門家に診てもらう必要がありますが、ぜひ一度お試しください。

 

PS ベンチプレスとローテーターカフ

ローテーターカフのことを書いたらベンチプレスを行う人が気にしていることが多いのがわかりました。

ベンチプレスで肩を痛める人は結構多いかと思います。また一度痛めたら再びベンチプレスを行うのに躊躇してしまいます。

実際、統計的にもベンチプレスにおいて最も多い障害はローテーターカフの問題(Rotator cuff strain)や上でご紹介したインピンジメントです。

ベンチプレスにおいて肩を痛めないためには、ローテーターカフの働きを学ぶのは有効です。

説明していきます。

ベンチプレスでバーベルを押し上げる筋肉は、基本的に大胸筋(通常のベンチプレスでは主に胸骨部)、三角筋前部といった筋肉になります。これらはベンチの角度やバーベルの持つ幅でも変わってきます。

しかしながらバーベル押し上げるの前後には、当然のようにバーベルを胸の方まで下ろしていくという動作を行います。

バーベルを上げることばかりに意識が行きがちですが、下ろす際のコントロールも重要です。

 

まずは肩甲骨

それには肩も重要ですが肩甲骨の動きも大事になってきます。

バーベルを下していく際の肩甲骨の動きは、上の内転と下方回旋という動作のコンビネーションになります。

 

また重力に逆らって維持をするのでエキセントリック収縮、つまり前述の地点Aと地点Bが離れるのを維持する筋肉の働きを行っています。

筋肉は押す際と変わって、僧帽筋の下部や前鋸筋といった筋肉が主に働きます。

このエキセントリックの維持により、強いパワーを維持したり肩関節の動きをコントロールします。

えいやっとバーベルを押す時並に、下ろしていくじんわりした動きでも筋肉をつかっているわけです。

次に肩関節

肩におけるエキセントリックの動きは肩を後ろにもっていく水平伸展と伸展という動作の組み合わせになります。これはバーベルを下げる動きの段階で変わります。

肩関節外転90度ほどになると関節包という部分の圧迫が強くなり、可動に問題がある人は下げる角度を考慮する必要がでてきます。

このエキセントリック収縮の際に重要なのが、肩関節に近づけて安定させるローテーターカフの役割です。

ローテーターカフで肩の安定性がコントロールできないと、上腕骨の骨頭側がソケット部の肩甲骨側にたいして前方にいってしまいます。

こうなると大胸筋の地点が変わってしまい(位置覚)安定性を失います。

こうならないように上記のような棘上筋の最初の関節の安定化や、さらには肩甲下筋、棘下筋のバランスなどが重要となってきます。

対処法

可動域自体が低下してしまうとエクササイズも効果を半減するので以前に記事で紹介しているフロスバンド振動ロールで緩和をした後に肩関節安定化のためのエクササイズを行うとよいでしょう。

お勧めエクササイズ

これらは先に筋肉の地点A、Bの位置感覚を正常化するためにベンチプレスのウォーミングアップとして行うのが良いかと思います。

参考文献
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2857390/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21333595/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3419146/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2857390/
https://academic.oup.com/ptj/article/80/3/276/2842494
https://biblio.ugent.be/publication/1061692/file/6743535
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK10898/
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0136217
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8781865/

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